譲渡担保は、民法の条文には無いものの、実社会でよく使われる担保手法です。
本記事では、ちょっとわかりにくい譲渡担保を具体例を交えてわかりやすく解説しています。
譲渡担保とはなにか?
譲渡担保とは簡単に言って、動産にも使える抵当権みたいな担保と考えてOKです。
住宅ローンを組んだ方はわかると思いますが、住宅資金としてお金を借りる場合、自宅の土地や建物を担保に差し出します。
これを「抵当権」といいます。
ただし、抵当権は「不動産」、「地上権」、「永小作権」にしか設定できないため、高価な機械などの「動産」には設定することは出来ません。
また、「質権」であれば、動産にも設定できるのですが、この場合、「質入れ」つまり、お金を貸している人に動産を預けなければいけません。
先程の例でいくと、高価な機械を使用して収益をあげている業者にとって、質入れは不都合なのです。
そこで、考えられたのが「譲渡担保」です。
質入れと違い、お金を借りる側が担保物を手元においたまま、使用収益することができます。
ちなみに、抵当権も担保物である自宅を銀行などに差し出す必要がなく、自身が使用(=住む)収益(=貸す)が可能です。
つまり、動産にも設定できる抵当権のような担保なのです。
譲渡担保は民法の条文には無い
譲渡担保は民法で明文化されていません。
つまり、条文には無いのです。
実社会では必要とされているのに、民法の条文にはないため、数々の判例をもとに判断します。
関係する判例
- 最判昭30.6.2
- 最判昭62.11.10
- 最判平6.2.22
- 最判平12.4.21
- 最判平13.12.22
- 最判平18.7.20
なお、民法を学習していると第2編 物権の一番最後(第398条の22の後)で登場したりします。
譲渡担保の対象物
先程、譲渡担保は動産にも設定できる抵当権みたいなものと言いましたが、対象物は動産だけではありません。
以下が譲渡担保の対象物です。
- 動産
- 不動産
- 債権
動産
動産とは、不動産以外の物です。
例えば、機械、魚、ガソリンなどが考えられます。
不動産
不動産とは、土地とそれにくっついているものです。
例えば、土地、建物、橋などが該当します。
債権
債権とは、簡単にお金を貸している権利などが該当します。
これら、すべて譲渡することができるものであれば譲渡担保にすることができます。
不動産を譲渡担保にするメリット
抵当権でいいと思いがちな不動産でも、譲渡担保にするメリットがあります。
それは、抵当権で適用される各条文の適用が譲渡担保ならないことです。
- 第375条
- 第379条
第375条(抵当権の被担保債権の範囲)
1
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。2
前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
第379条(抵当権消滅請求)
抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
譲渡担保は変動する動産でもOK
譲渡担保は量が変動する場合でも1つの集合動産として設定することができます。
例えば、以下の範囲が特定されればOKです。
- 場所
- 種類
- 量
例:A倉庫内(場所)の甲在庫(種類)、50個(量)。
譲渡担保をわかりやすく解説:まとめ
今回の内容をざっくりまとめるとこんな感じです。
- 譲渡担保は、抵当権に似ている。
- 譲渡担保は質権と違い、設定しても債務者が使用収益できる。
- 譲渡担保が設定できるのは、動産、不動産、債権。