不動産取引で土地を売買する際などによく参考図面として用いられる「地積測量図」ですが、地積測量図がどういう物か知っていますか?
今回は、
- 地積測量図って名前は聞いたことあるけど良くわからない。
- 過去に測量したのになぜ、自分の土地の地積測量図が存在しないのか?
というような方を対象に宅建士資格を有した神奈川県の行政書士がわかりやすく解説します。
この記事を読めば、地積測量図について一通り理解出来き、不動産売買時の判断材料の一つに地積測量図を利用することも出来るようになります。
誰でも分かるように解説しますので、肩の力を抜いて読み進めてみてください。
地積測量図とは何?
一言で言って、地積測量図とは土地の面積、つまり地積が分かる図面のことです。
そもそも、地積測量図は以下のように定義されています。
一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面であって、法務省令で定めるところにより作成されるものをいう。
出典:不動産登記令第2条第3号
読んで字のごとく、土地の面積である「地積」を「測量」した結果を示した「図面」ということであり、法務省の管轄で管理する公の「図面」が「地積測量図」です。
地積測量図を見ることでその土地の面積と境界点の位置や寸法が分かります。
そして、地積測量図を元に現地に境界点を復元することが可能です。
地積測量図は公図とは違い、公図よりも優先されます
法務局で管理されている土地図面は地積測量図の他に公図という図面があります。
ただし一般的に法務局にある図面と言われれば、それは地積測量図の事を指しています。
一方、公図のことを地図と言ったりします。
よく、公図を根拠に土地の境界を主張する土地所有者がいますが、公図はあくまで土地の位置関係を表したものに過ぎず、一番優先されるのは地積測量図です。
公図の寸法って結構いい加減なことが多く、実際は土地と土地が隣接しているのに公図で確認すると隣接していないように見えたりすることがあります。
ですので、地積測量図と公図は必ずしも一致しないことがあり、優先されるのは地積測量図であることを覚えておいて下さい。
地積測量図の取得方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
過去に測量をしたのに地積測量図がない場合もある
ここまで読んで地積測量図を取得しようとして「あれ?うちの土地は昔、測量をしたはずなのに地積測量図がない。って言われたことがある。」と疑問に思う人がいるかも知れません。
そうなんです。例え過去に測量をしたとしても、法務局に地積測量図がない場合があります。
それは、測量をしたからと言っていつでも自由に法務局に図面を納められるわけではないからです。
もし、地積測量図のない土地の面積を知りたいならこちらの記事の方法を参考に自分で計算することも可能です。
地積測量図が作成され法務局に納められる流れ
地積測量図は、ある一定の条件を満たした場合に限り法務局に納めることが出来るのです。
その条件とは以下のような登記作業です。
- 土地表題登記:新たに地番をふる登記。
- 土地分筆登記:土地を分ける登記。
- 土地地積更正登記:土地の面積を訂正する登記。
地積測量図はこの登記をする場合に限り添付図面として法務局に提出することができます。
そして、これらの登記をするには、測量だけでなく以下のような手順を踏む必要があります。
- 土地家屋調査士が土地を測量し、現況測量図を作成する
- 現地立会いをし、境界確認書(所有権界)を作成する
- 現況測量図を元に実測図を作成する
- 登記申請時に地積測量図を添付する
順番にみていきます。
1. 土地家屋調査士が土地を測量し、現況測量図を作成する
例えば、あなたが自分の土地を土地境界の専門家である土地家屋調査士に依頼をして測量したとします。
土地家屋調査士は、あなたの土地に古くからある境界杭やブロック塀の形状、さらには隣地の地積測量図などを参考に面積が載った図面を作ったとします。
ただ、この時点では、この図面はあくまで現在の状況、つまり現況を測量した図面という意味で「現況測量図」などと呼ばれます。
一見自分の土地の面積が決まった様に思えますが、この時点でまだ土地の面積は決まりません。
なぜなら、その境界線はまだ隣接地土地所有者が認めた訳ではないからです。
2. 現地立会いをし、境界確認書(所有権界)を作成する
そうなんです。土地家屋調査士が作成したとは言え、現況測量図まだ隣接地土地所有者の方が認めていません。
いわば独りよがりの図面です。
もしかしたら、その境界杭はあなたの祖先が隣地の了承なしに勝手に入れた杭かもしれません。
はたまた、自分はブロック塀の外側が境界線だと思っていたとしても、隣地の方は「いいや。内側だ」と言い張るかも知れません。
まずは「境界立会」という話し合いの場が必要です。
そこで、土地家屋調査士が作成した「現況測量図」などを元に、現地で境界立会をし、お互いが納得した上で「境界確認書」という書類に印鑑を押し双方に取り交わします。
この作業が完了して初めてお互いが認め合った境界である「所有権界」が決まります。
3. 現況測量図を元に実測図を作成する
この一連の流れを、公道を含め隣接する土地すべてで行うことで、土地家屋調査士は面積が不確定だった「現況測量図」をほぼ確定したしたことを示すする「実測図」という名前の図面を作成することが出来ます。
この「ほぼ確定」というのがポイントです。
なぜ、「ほぼ」なのかというと当事者同士で決めた境界線ではありますが、この時点ではまだ登記を出す前なので法務局が認めた境界線ではありません。
法務局が境界線として正式に認めるまでは公に認められた境界線とは言えません。
そのため、登記申請をし、地積測量図を法務局に納める手順に進みます。
4. 登記申請時に地積測量図を添付する
お互い同士が認めた境界線を「所有権界」というのに対し、法務局が認める境界を「筆界」などと呼びます。
「筆界」は言わば法務局がお墨付きを与えた境界線です。
※読み方は「ひっかい」や「ふでかい」と読みます。
- 所有権界:当事者で決め、まだ公には認められていない境界線
- 筆界:法務局が認め、公の場で通用する境界線
この筆界を決めてもらうために、登記申請をし添付資料である地積測量図を提出し法務局のOKをもらう必要があるのです。
通常、土地家屋調査士は実測図を作成する際には何かしらの根拠や過去の地積測量図などの図面との整合性を図ったうえで作成しているため、実測図の所有権界をもとに地積測量図を作成すればそれが筆界として法務局も認めます。
ところが、整合性が取れていなかったり、所有者の主張する境界線があまりにも常識的に考えられない位置にある場合、法務局はOKをだしません。
この「法務局がOKをすること」すなわち、登記があがった時点で地積測量図が法務局に納められ、一般に筆界として公開されるのです。
ただし、これらの登記をする際に地積測量図を添付する義務が生まれたのは最近になってからですので、過去に登記をしていたからといってそれが古ければ地積測量図が存在していない可能性が大いにあるのです。
以上の理由から登記が最近行わていれば、地積測量図が存在し、境界確定が終わってい土地であると言えます。
逆に言えば、隣接地すべての境界確定が終わっていないと、地積測量図も作れず、登記も出来ないと言えます。
なお、地積測量図が納めれる基準についてはこちらの記事を読むと理解が深まります。
まとめ:地積測量図は不動産取引で最も重要な図面の一つ
以下に今回のポイントを箇条書きにしました。
- 地積測量図は地積や境界点の位置関係、寸法が分かる公の図面。
- 公図より地積測量図が優先される。
- 土地表題登記、土地分筆登記、土地地積更正登記をしていないと地積測量図がない場合がある
地積測量図を参考にすることでその土地の地積だけでなく、その土地がどの様に分筆されてきたかなど、土地に関する様々なヒントを読み解く事が出来ます。
また、地積測量図の見方についてはこちらの記事をご覧ください。
是非、あなたの不動産取引にお役立ていただければと思います。