「地積測量図」を取得しようとした際に複数の作成年月日のものがあり、どれを取ればいいか困った経験はありませんか?
基本的には新しいものを取得しておけば良いと言われています。
本記事では、その理由を神奈川県の行政書士が地積測量図の歴史を交えて解説します。
時代ごとの地積測量図を見本付きで解説していますので、十分参考になるかと思います。
そもそも地積測量図って何?という人はこちらの記事をご覧ください。
地積測量図は新しいものほど測量精度があがり誤差が少なくなっている
法務局で地積測量図を取得すると新しいものから古いものまで取得する事ができます。
地積測量図を見る上で新旧どの時代に作成された地積測量図かというのは、土地の面積を見る上でかなり重要になります。特に土地を売買する場合はなおさらです。
なぜなら、時代によって地積測量図を作成する上での必須記載事項や境界確定の有無、さらには測量技術が異なるからです。
一言で言って、古ければ古いほど基準が甘く、寸法や面積も信用出来ません。
では、どの時代の地積測量図が存在すれば信用出来るのか見ていきましょう。
結論から申し上げれば、信用出来る地積測量図は平成17年3月7日以降に作成されたもので、新しければ新しいほど良いです。
その理由を知るには、地積測量図の歴史を理解する必要があります。
地積測量図の歴史
以下、法改正など時代ごとに移り変わる地積測量図の歴史とその特徴を簡単に説明します。
~昭和35年3月
この時代、地積測量図は「申告図」と呼ばれており、土地の所有者が土地を分ける際に役場に申告をする図面でした。
図面の目的としては納税申告のために分けた土地の面積を役場に申告するものでした。
そのため、境界標の有無はもちろん、隣接地との立会いは不要で、現地を測量しなくても申告が可能でした。
大まかな土地の形状はわかりますが、境界標の位置関係は現地に埋設されているものを確認するしかありませんでした。
そして役場の保管期限10年と規定されていたため、土地所有者が大切に保管している以外で、現在はほぼ残っていません。
昭和35年4月~昭和41年3月
この時代から、図面を資料として永久的に残そうという動きが強まりました。
図面の名称も「地積測量図」と呼ばれるようになり、保管先は法務局が選ばれました。
現地測量の義務があったわけではありませんが、平板測量と呼ばれる古い測量道具、尺貫法という古い単位を使った測量がなされ図面が作成されました。
当時の測量精度はもちろん悪く、依然として境界標の位置関係は現地頼りでした。
もちろん、図面から現地復元性は考えられていませんでした。
昭和41年4月~昭和52年9月
この頃には役場から法務局への作業が完了し、多くの土地で地積測量図が法務局に現存するようになって来ました。
また、地積測量図をできるだけ正確なものにするという動きが強まり、単位も以前の尺貫法からメートル法に変わる様になりました。
ただ、依然として平板測量が主流で、図面作成も手書きで行われていたため、正確性と信頼性はイマイチです。
そして、この時代は山林などを切り開き宅地を作る宅地造成の需要が高まりすぎた結果、いい加減な地積測量図が多く出回りました。
そのため、現存する境界標を測量したとしても、当時の地積測量図の距離と大きく異なるケースも少なくありません。
この当時の地積測量図に復元性を求めるには無理があります。
以上のことから、この時代の地積測量図も信用出来ません。
多くの測量現場で一つの判断材料として捉えられることがほとんどです。
昭和52年10月~平成5年9月
昭和52年の法改正により、義務ではありませんが地積測量図に境界標と引照点を明記するように呼びかけられました。
目的としては、地積測量図から現地の境界点を復元出来るようにする事が挙げられます。
どういうことかと言うと、図面をみて境界点が現地のどこのポイントを示しているか特定できるようにする必要があるということです。
また、この時代から隣接地土地所有者と現地立会いをし、境界確認を行った書類を残すケースも出てきました。
測量方法としては、多くの現場でトランシット呼ばれる測量器械の使用が開始されてきました。
トランシットは測量と聞いてあなたが想像するあの器械です。
そのため、正確性図面も存在していますが、一方で依然として巻き尺を使った測量で現地立会も行っていないという、ケースも多々あるため、不正確な図面も多く存在しています。
そのため、例えこの時代の地積測量図があったとしても、現在、面積を確定したい場合もう一度測量をして立会をする事が一般的です。
平成5年10月~平成11年9月
平成5年の法改正により、原則として地積測量図には現地にどのような境界標が埋設されているのかを明記するように義務化されました。
そして、座標値を載せた地積測量図も出回るようになりました。
これにより、地積測量図からの復元性も飛躍的に高まりました。
また、立会を厳格化する動きが高まった結果、立会いをしたと言うことを証明する「立会証明書」という書類もよく使われるようになりました。
平成11年10月~平成17年3月6日
土地所有者の土地に関する意識が高まった結果、隣接地同士のトラブルが増えて行きました。
そこで地積測量図の作成で、隣接地土地所有者の印鑑証明書を求められるようになりました。
※今現在は印鑑証明書は必要なし
平成17年3月7日以降
平成17年の法改正を機に、地積測量図ではより復元性を求められる動きが強まりました。
ポイントは2つあって
①原則として世界測地系を使った公共基準点を使用
先程説明した、世界測地系の座標値を使うことで、日本のどこにどのような土地が存在しているのかを地積測量図を見るだけで復元することが可能になります。これはとても凄いことです。
②原則として全隣接地土地所有者との立会いが必須
地積測量図を作成する際に、原則として当該地の全ての境界線に隣接する土地所有者との立会いが必須となりました。
これにより、立会いなしで土地表題登記、土地分筆登記、土地地積更正登記をすることが出来なくなりました。
このように、様々な制約が生まれたことで、測量する側は大変ですが、一方でかなり信用出来る図面が出来上がります。
現在の地積測量図が存在すれば、例え境界標が飛んでしまっても、5mm程度の誤差で復元することも可能です。
現在の地積測量図の見方を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
いつの時代の地積測量図を信用すればいいのか
以上のことから、新しければ新しいほど信用度があがりますが、あえて目安をあげるならば、
- 平成5年10月~平成17年3月6日…まあまあ参考になる。復元性もある程度保証される。
- 平成17年3月7日以降…境界立会いが終わっており、境界が確定されているため十分信用出来るケースが多い。復元も十分に可能。
という感じでしょうか。
まとめ:平成17年3月7日以降の地積測量図を取得しておけば間違いない
地積測量図の歴史を知ることで時代によって地積測量図の信頼性や精度が異なる理由がわかったと思います。
以下に今回のポイントを箇条書きにしました。
- 地積測量図は作成年月日で大きく精度や役割が異なる。新しい方が誤差も少ない
- 平成17年3月7日以降の地積測量図が存在する場合は境界立会いが終わっており、境界が確定されている