境界点はどこ?コンクリート杭や金属プレートなど境界標識の種類も解説

  • 土地の境界点は境界標のどこを見ればわかる?
  • 境界標の種類を教えて欲しい。

このような疑問に答えます。

結論は「十字なら真ん中、矢印なら境界標のへり」です。

本記事では、宅建士資格を有した神奈川県の行政書士が境界点の位置と境界標の種類を図や写真を沢山用いてわかりやすく解説します。

本記事を参考にするだけで、境界標がどういうものなのか簡単に理解できます。

境界標とは?

境界標とは土地の境界点を示した標識のことです。

ABCDEなど境界線が曲がるポイントに通常設置します。

境界標にはコンクリート製の杭や金属製のプレートなど様々な材質があります。

基本的に「境界点」を示したものになるのですが、場合によっては「境界線(方向)」を示すケースもあります。

これについては次で詳しく解説します。

どのポイントが境界点になるのか?

境界点は標識の印(マーク)によってどこを指し示すのかが変わります。

現在は以下のように数種類の印があります。

  • 丸印
  • 十字
  • T字
  • 角矢(斜矢印)
  • 直矢
  • マイナス印

上記は例外であるマイナス印を除き、基本的に「点」を示すものだと考えてください。

以下で、どこが「境界点」になるのか詳しくみていきます。

丸印

境界点としては最もわかりやすい「丸印」です。

かなり古くからある印で、見た通り丸の点が境界点となります。

御影石杭や役所が管理するコンクリート杭などによく見られます。

十字

十字の印がある場合は基本的に十字の真ん中が境界点となります。

ただし、例外として以下のような場合もあります。

  • 十字の端を境界点とする
  • 十字だとしても「方向線」を示す

十字の端を境界点とする

前者の理由は、歴史的に十字は丸印の次に古い印で、その当時「矢印」のコンクリート杭はまだ存在しませんでした。

そのため、ブロック塀などの工作物が当たるなど、物理的に十字の中心をポイントとして設置することが不可能な場合は仕方なく端を境界点とするケースが生まれてしまうのです。

十字だとしても「方向線」を示す

後者の場合は、元々は民々の境界点が十字の中心だったものが、道路との境界を新たに決めた際に前後してしまう場合に起こります。

なぜなら、道路の境界(官民境界)を決める際には「街区」と呼ばれるかなり広い範囲で測量をかけ、役所に存在する資料を元にラインを決めるため、土地の所有者が思っていたよりも前後する場合が多々あります。

ただし、これを不満に思っても100%役所が折れることはないため、土地所有者が飲まないと官民境界不調になります。

官民境界についてはこちらの記事をご覧ください。

土地家屋調査士が判断

これら「十字」の中心に境界点が来ないケースは素人ではなかなか判断が難しく、境界トラブルの元となってしまうことが多いです。

そのため、土地家屋調査士という専門の国家資格所有者に相談依頼することで、地積測量図(法務局に保管されている図面)や官民査定図(道路等の境界図面)などの資料を根拠に公平に判断してもらえます。

それを元に、土地の所有者同士で話し合って決めるのが通常です。

T字

3つの土地が接するポイント(三者境)にはT字の標識を入れるケースがあります。

この場合、Tの字の交点に最も近い縁が境界点になります。

ただし、三者境だからと言って必ずしもT字の境界標を入れるわけではなく、十字の境界標や最近では矢印の境界標を入れるケースのが多いです。(意味は全て同じ。)

角矢(斜矢印)

角矢(斜矢印)は斜めの矢印が表記された境界標。

指し示す点は矢印の先ではなく、境界標の角です。

角矢(斜矢印)はわりと最近できた印で、先程の十字では物理的に設置ができない場所にも設置可能です。

とりあえずこの標識があればだいたいのケースに対応できる万能型です。

現在境界標は自分の敷地側から入れる

一昔前は十字の杭などが設置されるような場所でも、現在の慣例として角矢(斜矢印)を自分の敷地側から入れるケースが増えています。

理由は以下のような意識の変化によるものが大きいです。

  • 一昔前:境界標は共有物である
  • 現在:境界標は個々人で管理する

例えば十字杭の場合、自分以下の他人の敷地をまたいで杭を設置することになります。

ところが、上の図を見てもわかる通り角矢(斜矢印)であれば、他人の敷地に一切境界標を入れることなく境界点を示すことができます

なお、境界点指し示す意味合いはどちらも同じです。

直矢

直矢は真ん中に矢印が表記された境界標です。

指し示す点はこちらも矢印の先ではなく、その先の境界標のへりです。

この印は、分譲地の分割点で使用されるケースが多いです。

例えば、1筆の土地を2筆に分割(分筆)し、建売住宅を作る場合などは良く直矢のコンクリート杭などが埋設されます。

マイナス印

マイナス印は境界線方向線を指し示します。

ここまで説明した印は例外(十字)を除き、全て「境界点」を指し示すものでしたが、マイナス印は「境界線」を示します

点と線の違いですね。

「確かに、境界線はこの位置で間違いないが、境界線の終端である境界点についてははっきりと言えない」場合に使用されます。

例えば、三者境になるポイントでAさんとBさんとは境界線の話がまとまったが、Cさんとは揉めてしまった場合などです。

この場合はAさんとBさんの土地の境界線上にマイナス印の境界標を設置することで、境界線の方向は明示されることになります。

境界標識の種類

境界標識の種類は主に次のようなものがあります。

  • 御影石杭
  • コンクリート杭
  • 金属標(金属プレート)
  • プラスチック杭
  • 刻印

順番に説明します。

御影石杭

御影石を使った杭です。

御影石とは、墓石などに使われる石でかなり硬く、加工がしづらいです。

比較的古い時代の杭で、大半が真ん中に「丸印」の窪みがあります。

この場合、丸の中心が境界点となります。

コンクリート杭

コンクリート製の境界杭。

大きさは様々ですが、最低でも「7.5cm×7.5cm×45cm」くらいのサイズがあります。

主に設置箇所が土の場合に、穴を掘り、セメントを流し込んでコンクリート杭を設置します。

一度埋設すると、よっぽどなことがない限り動きません。

ただし、解体工事などがある場合で重機が触ってしまい動いてしまうケースをよく見かけます。

金属標(金属プレート)

金属製のプレートです。

金属標は以下のように主に2種類あります。

  • コンクリートボンド貼り付けるタイプ
  • アンカーで埋め込むタイプ

以下説明します。

コンクリートボンド貼り付けるタイプ

薄型でブロック塀の上などに境界点が来る場合などは、コンクリートボンドを使って金属標を貼り付けます。

かなり頑丈に張り付きますがあまり大きな力をかけすぎると取れてしまいます。

アンカーで埋め込むタイプ

こちらはアスファルトなど道路に設置する場合、コンクリートカッターで設置箇所の周りを少し削り、セメントを流し込んで金属標を設置します。

その際に、金属標の下にアンカーと呼ばれる棒を取り付けることで頑丈になります。

セメントが乾けば車が上を通過しても大丈夫です。

鋲には十字がきってあり、中心が境界点となります。

鋲をする場合は以下2つのケースが考えられます。

  • 物理的に鋲しか設置できない
  • 境界標を設置するのに神経質な人が隣地にいる

詳しく説明します。

物理的に鋲しか設置できない

ブロック塀やその他の工作物が邪魔して物理的に、コンクリート杭も金属標も設置できない場合は鋲を設置します。

境界標を設置するのに神経質な人が隣地にいる

隣接地の土地所有者の中には、境界自体は認めているのに、境界標を設置することを嫌がる人もいます。

また、他人の玄関前に境界点が来てしまうケースもあまり派手な境界標は望ましくありません。

その場合は一番目立たない鋲を設置したりします。

プラスチック杭

プラスチック製の杭です。

建築現場等で境界点を示した仮の杭として設置することが一般的ですが、中にはプラスチック杭を境界標として使用する地域もあります。

風雨や紫外線などに弱く経年劣化が激しいため、境界標として不向きです。

刻印

刻印とは、コンクリートの地表にコンクリートカッターなどで十字の溝をきったものです。

この場合、十字の中心が境界点となります。

刻印は、何らかの理由で境界標が設置できない場合に用いられます。

境界点の位置は境界標識のここを見る:まとめ

境界点や境界標には様々な種類がありますが、基本的には境界点の「一点」を指し示すためのものです。

そのため、形状や物理的な強度は違えど意味に優劣は無いと考えて大丈夫です。

ただし、物理的な強度や見栄え考えると次のような順で設置を検討します。

コンクリート杭>金属標>鋲

また、指し示す境界点の位置については次のように考えると覚えやすいです。

  • 十字は中心
  • 矢印は境界標のへり

特に「矢印」は矢印の先だと勘違いしやすいですが、実際は境界標のへりであるため注意が必要です。

このように、境界標の見方や種類を知ることで境界点の位置という本来の意味だけでなく、なぜその境界標が設置されているかなどの裏事情まで予想が可能になります。