公正証書遺言の作成費用はいくら?公証役場の手数料を行政書士が解説

  • 公正証書遺言の作成費用を知りたい。
  • 公証役場の手数料を知りたい。
  • 公証人手数料令を用いた具体的な手数料計算方法を知りたい。

こういった疑問に答えます。

本記事では、神奈川県秦野市の行政書士が、公証役場の手数料について解説します。

「公正証書遺言を作成したいけど、公証役場にいくら支払うの?」とお思いの方はぜひ参考にしてください。

可能な限りわかりやすく具体的にご説明しますので、一読いただければ、ご自身でおおよその計算ができるかと思います。

公証役場に支払う手数料は?

公証役場に支払う手数料は、政府により「公証人手数料令」という法令で定められています。

つまり、手数料は全国一律で、どの公証役場でも算定基準は同じです。

財産額等によって機械的に求められます。

金額の出し方としては、大まかに下記2つになります。

  1. 公正証書の作成
  2. その他

具体的な金額は、以下の表の通りです。

1.公正証書の作成

(1)法律行為の公正証書
目的の価額手数料
100万円以下のもの5,000円
100万円を超え200万円以下のもの7,000円
200万円を超え500万円以下のもの11,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下のもの23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下のもの29,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの43,000円
1億円を超えるものは超過額5,000万円までごとに、3億円までは13,000円、10億円までは11,000円、10億円を超えるものは8,000円を43,000円に加算
算定不能のもの11,000円
① 目的価額の算定例
ア 金銭貸借・債務弁済等の片務契約:賃借金等の額
イ 売買契約等の双務契約:売買代金等の2倍の額
ウ 不動産賃貸借契約:期間中の賃料総額(ただし10年分まで)の2倍の額
エ 担保設定:担保物件と債権の額のいずれか少ない額。債権契約とともにするときは、前記少ない額の半額を債権の額に合算した額

② 遺言の手数料
ア 相続及び遺贈を受ける者が2人以上ある場合、各相続人及び受遺者ごとに、その目的の価額(その人が受け取る利益の総額)によって手数料を算定し、それを合算した額
イ 祭祀主宰者の指定は、11,000円
ウ 目的の価額の総額が1億円以下の場合は、11,000円加算
エ 遺言の撤回は、原則として、11,000円
オ 秘密証書遺言は、11,000円
カ 病床執務の場合、通常の手数料の額にその2分の1加算

③ 離婚の手数料
ア 財産分与と慰謝料はそれらを合算した額で手数料を算定、養育費はこれとは別個に手数料を算定、以上の合算額
イ 年金分割合意は、原則として、11,000円

④ 任意後見の手数料
ア 公正証書作成の基本手数料は、11,000円
イ 登記嘱託手数料 1,400円、収入印紙代 2,600円、送料実費

⑤ 委任状の手数料 7,000円

⑥ 建物区分所有法による建物の規約設定の手数料 23,000円以上(専有部分の個数によって加算)
(2)事実実験公正証書
① 事実の実験並びにその録取及びその実験の方法の記載に要した時間1時間ごとに11,000円
② 休日又は午後7時から翌日午前7時になされたときは、2分の1加算
〈備考〉
① 法律行為の公正証書原本の枚数が4枚(B4判横書きの場合は3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円加算
② 役場外執務は、日当20,000円(4時間以内10,000円)、交通費実費
出典:日本公証人連合会【公証人手数料令(令和3年政令第328号改正、令和4年1月1日施行)】

2.その他

私署証書の認証11,000円備考参照
私署証書の宣誓認証11,000円
定款の認証(電子定款を含む)株式会社については手数料とは別に収入印紙40,000円。ただし、電子定款の場合は、収入印紙不要
株式会社・特定目的会社で、資本金の額等が
① 100万円未満のもの30,000円
② 100万円以上300万円未満のもの40,000円
③ 上記①、②以上のもの50,000円
一般社団 / 財団法人、各種法人50,000円
株式総会等の議事録の認証23,000円
私署証書の謄本の認証5,000円
確定日付の付与700円
執行文の付与1,700円承継等1,700円加算
正本 / 謄本の作成1枚につき250円
謄本等の送達1,400円送料実費
送達証明250円
閲覧1回につき200円
電磁的記録の認証(電子定款は「定款の認証」欄を参照)11,000円備考参照
日付情報の付与700円
電磁的記録の保存300円
情報の同一性に関する証明700円
同一の情報の提供700円
〈備考〉
① 私署証書又は電磁的記録の内容を公正証書として作成するとしたときの手数料の半額が11,000円を下回るときの認証は、当該下回る額
② 私署証書又は電磁的記録が外国文であるときの認証は、6,000円加算
出典:日本公証人連合会【公証人手数料令(令和3年政令第328号改正、令和4年1月1日施行)】

公証役場の費用・手数料の計算方法

今回は、公正証書遺言の場合を例にしてみます。

公正証書遺言の場合、手数料の算定方法は「誰が」、「いくら分もらう」かによって決まります。

以下2つのケース別で計算方法をわかりやすく解説します。

  • ケース①:預貯金のみの公正証書遺言の費用計算
  • ケース②:預貯金と不動産がある公正証書遺言の費用計算

ケース①:預貯金のみの公正証書遺言の費用計算

以下のような条件で公正証書遺言を作成する場合の費用を計算してみます。

  • 遺言者の財産は、イ銀行 1,000万円、ロ銀行 1,000万円、ハ信用金庫 200万円、二信用金庫 200万円の計2,400万円の預金。
  • 相続人となる妻Aにイ銀行とロ銀行の預金(計2,000万円)、長男Bにハ信用金庫の預金(200万円)、長女Cに二信用金庫の預金(200万円)を相続させる。

この場合、相続人となる3人でそれぞれに相続させる額をもとに計算していきます。

  • 妻A(2,000万円相続):目的の価格が1,000万円超~3,000万円で、手数料は23,000円
  • 長男B・長女C(200万円相続):それぞれ、目的の価格が100万円超~200万円で、手数料はそれぞれ7,000円

これに、以下が加算されます。

  • 遺言加算:11,000円
  • 用紙代:4,500円

これら、全てを合計すると、52,500円が公証役場に支払う手数料となります。

ケース②:預貯金と不動産がある公正証書遺言の費用計算

つづいて、預貯金以外に不動産も所有している以下のケースを計算してみます。

  • 遺言者の財産は、X銀行 500万円、Y銀行 800万円の預金、土地1筆、建物1棟。
  • 相続人となる妻AにX銀行の預金(500万円)と土地、建物を、長男BにはY銀行の預金(800万円)を相続させる。

この場合、まず不動産である土地、建物の価格を出します。

出し方は、「固定資産評価額」をもとにします。固定資産評価額は、役所で取得可能な評価証明書や固定資産税の納税通知書に記載されています。

固定資産評価額がそれぞれ次の通りだと仮定します。

  • 土地:2,000万円
  • 建物:1,000万円

その場合、相続人となる人の計算は以下の通り。

  • 妻A:500万円(預金)+2,000万円(土地)+1,000万円(建物)=3,500万円
  • 長男B:800万円(預金)

つまり、それぞれの手数料は、以下の通りとなります。

  • 妻A(3,500万円相続):目的の価格が3,000万円超~5,000万円で、手数料は29,000円
  • 長男B(800万円相続):目的の価格が500万円超~1000万円で、手数料はそれぞれ17,000円

これに、以下が加算されます。

  • 遺言加算:11,000円
  • 用紙代:4,500円

これら、全てを合計すると、61,500円が公証役場に支払う手数料となります。

以上が基本的な公証役場に支払う費用です。

公正証書遺言を作成する場合で他にかかる費用

これら以外に、公正証書遺言を作成する場合にかかる費用としては、以下のようなものがあります。

  • 算定不能なものがある:11,000円
  • 仏壇やお墓の管理など「祭祀を主宰すべき者」などを指定する場合:11,000円
  • 司法書士や行政書士などの専門家に起案や証人を依頼する:専門家への報酬額

公正証書遺言の作成費用はいくら?:まとめ

以上、本記事では公正証書遺言の作成費用について、計算方法とともにわかりやすく解説しました。

要点をまとめると以下の通り。

  • 目的の価格(「誰が」、「いくら分もらう」)から算出する。
  • 不動産は固定資産評価額が算定基準となる。

なお、公正証書遺言作成は高度な法律知識を必要としますので、専門家に依頼することをおすすめします。

行政書士にご依頼を検討する場合は、こちらをご覧ください。

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